デジタル vol.53ここ25年のインターネットやスマホの普及によって紙媒体は衰退したが、人々が目にする文字情報は確実にいや大幅に増えた。印刷された文字は紙の重みやインクの香りを伴い、それを脳に吸収する過程の時間にさえ幾ばくかの価値を感じさせるものだったが、デジタルの文字をかみしめるように読む人はいないし、その1文字1文字に愛着を感じる人もいないはずだ。デジタル化は文字を活用しながらも、文字の実存をゆるやかに消し続けているのだろう、今も。 デジタル化によって消えたもう1つのものは、限られた紙幅の概念だ。情報はいくらでも出せるようになり、誰でも提供側に回ることができる。日々生み出される膨大な文字情報は、目の前にある画面や手のひらの中で消費され続...25Nov2020
1つだけ vol.52ちょっと遠くまで和紙を買いにでかけた。そこには地元のものだけでなく全国各地の和紙が置いてあるので、きっと望みのものがあると思ったのだ。目的地までは、車で数十分はかかる。紅葉した山や川の流れを目にしながら、そこへと向かった。店内をすべて見て、決めたのは、残り1枚となった和紙だった。そこには同じ製品はもう作られないと記されており、最後の1枚を手にしたら本当に引き出し式の商品棚が空になった。11Nov2020