1つだけ vol.52

ちょっと遠くまで和紙を買いにでかけた。

そこには地元のものだけでなく全国各地の和紙が置いてあるので、きっと望みのものがあると思ったのだ。目的地までは、車で数十分はかかる。紅葉した山や川の流れを目にしながら、そこへと向かった。


店内をすべて見て、決めたのは、残り1枚となった和紙だった。そこには同じ製品はもう作られないと記されており、最後の1枚を手にしたら本当に引き出し式の商品棚が空になった。



「もう1枚あれば、2枚ほしかったな」
そう思ったけれど、たくさんある和紙の中で気に入ったのはこれだけだった。
だから、最後の1枚に出合えたのはむしろ幸運だったのだ、と思う。


私は、本当に気に入った和紙を買うことができた。
そして、それは購入したのと同時に
決して失敗ができない……たった1枚のたいせつな和紙となった。

Ki・Ma・Ma いつもの日々 with camera

ANTIQUE × Camera 変わらないのがいい、いつもの日常。