人類最大の発明は何か?
火、言語、車輪・・・。
アインシュタインはそれを複利だと言ったそうだが
個人的に、それは紙だと思っている。
「紙はなくなるのか」の議論とともに衰退する業界とも言われた出版界。
紙の本の流通量は減少し
ペンで文字を書く機会は減ったが
人々が文字を目にし
文字を使って情報発信する機会は増えている。
個人的にも書籍や雑誌に加えて
さまざまなウェブ媒体のお仕事をする機会が増えているが
「この記事はきっとしばらくしたら削除されるのだろう」と思うと
デジタルコンテンツの儚さも感じる。
紙の書籍を作っていたときに
ある上司が「この仕事は残る仕事だからね」と言った。
自分のした仕事は、物体としてまさにそこに出現するものだった。
出来上がってきた本には
「ああ、もっとこうすればよかった」と感じる部分が必ずあり
力不足によるミスまでも、きちんとそこに存在していて
言い逃れができないことを感じた。
仕事では、皆がノーミスのために力を尽くし
露わになってしまったミスを憎んだ。
うれしいことにデジタルコンテンツでは、ミスはいつでも修正できる。
だが、今度はその文章そのものが
一定期間の役目を終えると消し去られてしまうようになった。
印刷された書籍は
いまも誰かのどこかの書棚に物体として存在している。
紙に書かれた文字は
たとえば千年後、それを作った人たちがこの世からいなくなっても
誰かの目に触れてその想いを共有するかもしれない。
紙とはなんとロマンティックな物体なのだろう。
本当は、紙は人類最大の発明ではないかもしれない。
だが、人類が発明した
最高にエモいメディアだと思うのだ。
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