いつかのこと。
吉祥寺のとある書店。
当時『朗読者』で注目を集めていた新潮クレスト・ブックスの棚は平積みにされている本の装丁も魅力的で、私は「どれを読もうか」と迷っていた。
そこで強力に惹かれた作品がジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』だった。
ロンドン生まれで、両親ともにカルカッタ出身のベンガル人。ニューヨーク在住だというその女性作家のプロフィール写真は驚くほど美しく、彼女の立つ場所から紡がれる繊細かつ冷静な文体に魅了され、その後出版された『その名にちなんで』『見知らぬ場所』などの作品を読んだ。
きょうのこと。
図書館に本を返しに行った私は、なんだか立ち去るのが惜しくなって2階の書棚の間を歩いていた。
ふと足を止めたイタリア文学の棚。
そこにあった書籍の背の「ジュンパ・ラヒリ」の文字に驚いた。
長編小説『低地』を発表後、彼女は家族とともにローマに移住しイタリア語で創作を始めていたのだ。
今日は
本を返しに行ったのに、また借りてきてしまった。
それはもう、仕方のないこと。
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