これは「フランソワ・ポンポン展」で出会った
白色大理石の《シロクマ》。
動物の骨格や動きまでもが感じられる展示作品のうち
唯一撮影してもよいとされていたものであり、代表的な作品だ。
絵画と違って、彫刻は
正面からだけでなく、横からも、後ろからも観たい。
作品の周りをぐるぐると移動しているうちに
違った表情やフォルムが姿を現してくるからだ。
どこから観ても美しい造形と
特定の位置からしか見えない形や表情に魅せられる瞬間。
『レ・ミゼラブル』に登場する少女を題材にした
フランソワ・ポンポンの《コゼット》は
水桶を持って少し上を向いている少女の小さなブロンズ像だった。
正面からはそれほど見えないのに
作品の横からはあまりにも悲しげな表情が見えて
胸を掴まれるような思いがした。
正面からはよく見えない顔。
それは、普段は見せない顔のようでもあり
誰かが「人間は多面体」と言っていたのを思い出した。
表情がありありと伝わる位置を
決して正面にしないのがいい。
動物彫刻よりも、なぜか心に残った作品だった。
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